2015/11/14
半年ほど前、小倉駅での出来事。
時間は21時頃だっただろうか・・・前日からの発熱により体調は最悪。今すぐへたり込んでしまいそうなほどクタクタな状態で私は帰路を急いでいた。
モノレールに乗車するため、窓口で切符を購入していると、誰かが声をかけてくる。
「地元の方ですか?」
旅行者に道や電車の乗り方を尋ねられるのは、よくあることだ。恐らく今回もその手の質問なのだろう。
声のした方を振り返ると、見知らぬ男性が立っていた。
風貌から察するに年齢は50歳前後だろうか?中背痩せ型で、毎日寿司でも握っていそうな職人風の面構えだだった。
ただ、ダウンジャケットを着込んでも寒いほどの気温であるにも関わらず、何故かセーター一枚にスラックスという出で立ちが妙に引っ掛かる。荷物らしきものも1つも持っていないし、どう見ても旅行者には見えない。
怪訝に思いながらも、私は返事を返す。
福山雅治「どうされましたか?」
寿司職人風の男性「あのぅ、こんな事を初対面の人に頼むのはアレなんだけど・・・」
モジモジと少し躊躇いながら、男性はこう続けた。
寿司職人風の男性「大分から博多の友達に会いに行く途中で財布を落としてしまって・・・」
寿司職人風の男性「博多へ行くお金を貸してもらえんやろうか?」
怪しい、怪しすぎる!何で私なの?マジでツイてねぇー(涙)そんなことを考えながらも、もし本当だったらと考えると無下にするのもなと思い、会話を続ける。
福山雅治「警察には届けましたか?」
寿司職人風の男性「行ったけど、お金は貸して貰えんかった」
寿司職人風の男性「そういうことなら区役所行ってくれって言われたんやけど、こんな時間やし・・・」
小倉駅は、モノレールとJRの駅が隣接している。小倉から博多までは約1300円だ。
その日、私は前日からの体調不良でとても疲れていた。胡散臭いが、段々と面倒臭いに変わっていく。
早く帰りたかったけれど、無下にも断れなかった私は、もういいやと博多までの切符を購入し、男性に渡した。
寿司職人風の男性「ありがとう!助かった!!」
寿司職人風の男性「すぐに返すから、連絡先を教えて」
私は、1000円ちょっとのことで個人情報を教えるのに抵抗を感じたし、何よりも「ああやっぱりか」とガッカリしたくなかったため男性の申し出を断る。
福山雅治「返さなくて良いですから。もう良いですから。」
寿司職人風の男性「でも、それじゃあ・・・」
福山雅治「私にできるのはここまでです。お気をつけて。」
寿司職人風の男性「ありがとう」
ガッチリと男性と握手を交わした後、再び私は帰路に就いた。
男性が切符をどうしようが構わない。本当に改札へ入ったかも確認しない。
男性と別れてから、一度も振り返ることなく、ただ真っ直ぐに家を目指した。
良い事をしたと思いたい。
余談だが、その手の詐欺が相次いだ事から、現在では警察はお金を貸してくれなくなっているみたいだ。
調べたところ、大体どこでも市・区役所へ行けばお金を貸して貰えるようなので、財布を落として困った方はそちらへどうぞ。(もちろん警察への届け出も忘れずに)
ただし、夜だったら泣くしかないが・・・悪党達のせいで住みづらい世の中になったものである。真面目な人が馬鹿を見てるんだよなぁ。