取材拒否、とあるラーメン店で

先日、テレビを何気なしにつけると、ラーメン特集が放送されており、その中で、私の家の近所にある店が紹介されていた。店舗の外観、大将の顔にはモザイクがかかっていたが、住所や近所の風景から、間違いなくあの店だと分かる。

大将は、ボイスチェンジャーで変換された高い声で言った。

「ウチは取材は、お断りだよ！！帰れ帰れ！！」

取材なんかくそくらえだと言わんばかりに怒鳴り散らす大将に、テレビスタッフも何とか食い下がるも、その後、結局モザイクが外れることなく、その店への取材は失敗に終わってしまった。

これが遠くの知らない店舗であれば、これを放送したテレビ局に対して「何だこりゃ？」と只々呆れるだけなのだが、近所の知ってる店であり、この店で実際に食べた経験がなかったことから、どんなラーメンが出てくるのか非常に気になっていた。

そこで今日、実際に食べに行ってみた。

土地柄、近所で食べられるラーメンは、とんこつが多いのだが、この店は味噌メイン。そして、普通盛りが通常の2玉分あり、小盛が1玉分という変わった配分の店だった。普段、豚骨派で豚骨ばっかり食っている私でも、味は美味しかったと思う。

なるほど、大将が頑固で偏屈なオヤジだが、味が良いため、ダメ元で取材に行ったのだなと、そう思って納得しかける。

食事も残すところスープだけになった頃、ふと、席横に置かれた、たくさんのラーメンが表紙を飾る情報雑誌に目がとまる。何となくページを開くと、どこかで見たような顔のオヤジが満面の笑みを浮かべて写っていた。

この店の大将である。

それを見た瞬間、思わずスープを吹き出した。

取材受けてるじゃん！！